メタボリックがもたらす高脂血症
高脂血症
高脂血症(こうしけつしょう、HL:Hyperlipidemia)は、血液中に含まれる脂質(中性脂肪やコレステロールなど)が過剰な状態を指す。
診断基準による分類
高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセリド血症といった種類があり、WHOの基準に基づき日本動脈硬化学会が診断基準を定めている。
高コレステロール血症/hypercholesterolemia
血液中の総コレステロール値が高い(220mg/dL以上)タイプの高脂血症である。生活習慣による高脂血症の多くがこのタイプである。フラミンガムスタディにおいて使用されたためこの値と生活習慣病との関連が注目されたという意味で重要だが、最近ではLDLのほうがあきらかに心血管リスクとの相関度が高いのでこの値の重要度は廃れている。現在WHO、アメリカ、日本のガイドラインの中で、いまだに総コレステロール値を重視しているのは日本のガイドラインのみである。
高LDLコレステロール血症
コレステロールの担体である低比重リポ蛋白(LDL)が血液中に多く存在する(140mg/dL以上)タイプの高脂血症である。現在世界最新のガイドラインである米国ATP-IIIによれば、コレステロールの検査値の中では唯一心血管疾患の絶対的リスクファクターであり、他の検査値であるHDL、トリグリセリドと比較して明らかに重要度が高い。
低HDLコレステロール血症
血液中の、いわゆる「善玉コレステロール」が少ない(40mg/dL未満)タイプの高脂血症である。特に女性において、心血管疾患の重要なリスクファクターとなりうる。
◆リポ蛋白
高トリグリセリド血症 (高TG血症)
血液中にトリグリセリドが多く存在する(150mg/dL以上)タイプの高脂血症である。内臓脂肪型肥満の人に多い。一時期(米国ATP-IIのころ)、その心血管疾患との関連が疑問視されたが、現在ではやはり関連はあると考える人が多い。RLP-C(Remnant-like lipoprotein particles-cholesterol)が、高TG血症における動脈硬化発症への関与が示唆されている。
根本要因による分類
生活習慣に起因する高脂血症
喫煙や食生活の乱れなどにより、血液中のコレステロール値が上昇した状態。食生活の改善や運動の習慣化により改善されることが多い。
家族性高脂血症
LDLの代謝異常など先天的要因による高脂血症で、治療回復が困難である。
◆I型家族性高脂血症
末梢組織が血液中を循環するリポ蛋白から脂肪酸を受け取る際に使われるリポ蛋白リパーゼ、あるいはそれを活性化するアポ蛋白であるapo C-IIの機能不全により、血液中の脂肪が末梢に行き渡らず、血液中に増えるために起こる。血中カイロミクロン濃度の増加が見られる。
◆II型家族性高脂血症
LDLはLDL受容体を介して、末梢細胞に取り込まれるが、このLDL受容体を欠損あるいは障害を受けた場合に発症し、血中のLDLが増加するために発症する。
◆III型家族性高脂血症
末梢細胞によるリポ蛋白認識の際にマーカーとなるアポ蛋白 Eの3種の分子種(apo E2、E3およびE4)の内、正常型のE3に対して受容体への結合力の弱いE2を発現していると、カイロミクロンレムナントやIDLの血中からのクリアランスが低下してこれらが蓄積するために発症する。特徴的な症状には手掌線状黄色腫がある。
二次性高脂血症
日常臨床では、甲状腺機能低下症とネフローゼ症候群が挙げられる。閉経後や妊娠中も血清脂質が上昇する。
合併症
黄色腫(皮膚にできる黄色い腫瘤)
治療
体脂肪率の減少により大きく数値を低下させることが可能である。2-3kgの減量が大きな影響を与える。
食事療法
日常の生活強度に合った食事をする必要がある。目安は、
総エネルギー量(kcal)= 標準体重(kg) × 生活活動強度指数(kcal)
・生活活動強度指数
・軽労働(主婦・デスクワーク):25〜30 kcal
・中労働(製造・販売業・飲食店):30〜35 kcal
・重労働(建築業・農業・漁業):35〜40 kcal
で計算し、食事量を決める。エネルギー量の計算は、80kcalを1単位として計算する方法が簡単で、一般的である。例えば、デスクワークの多い成人男性では、1500kcal〜1600kcal(約20単位)ということになる。
その他、重要点として
・毎日、いろいろな食品をとり混ぜて、バランスよく摂取する。
・アルコール、甘いものは控えめにする。
・食物繊維をとる。
・1日3食きちんと食べる。
運動療法
医者と相談してメニューを決めて実行する。いきなり激しい運動は避けるべきである。(内部リンク:運動療法も参照のこと)
投薬による治療
スタチン系などの脂質降下薬(LLD : lipid lowering drug)である程度血中の中性脂肪やコレステロールを下げることができ、合併症の発症リスクが下がるとされる(→根拠に基づいた医療)。
ただし、薬剤治療は高脂血症の原因を解決するものではないので中止すればまた以前の値に戻ることが多く、そのことを指して「一生やめられない」と表現されることもある。これは、麻薬のように身体依存性があったり、ステロイド製剤のように急に中止できないという意味ではない。根本的なコントロールには生活改善が望まれるが、遺伝素因も大きいため必ずしも生活習慣だけで治療できるものではない。
透析による治療
LDLアフェレーシスといわれ、重度の家族性高脂血症を患う人などに行う治療法である。
患者の血液を取り出し、LDLなど不要なものをろ過して体内に戻す方法で、血液中のコレステロール量は急激に減少するがすぐに元に戻ってしまうため、2週間に1度は治療を行う必要がある。
しかし、これも根本的な解決には至らない。
高脂血症に由来する疾患
・動脈硬化症:自覚症状はない場合が多いが、血管壁に徐々にコレステロールが蓄積され動脈硬化症が進行することで血液の流れが悪くなる。特に頭蓋内の血管がつまり、脳の一部が死滅する脳梗塞や、心臓の冠動脈の血管が詰まる虚血性心疾患になりやすい。
高血圧、糖尿病、肥満とともに死の四重奏と俗称され、現在はメタボリック症候群といわれる。
・膵炎:膵臓の病気。大量飲酒者では高トリグリセリド血症をきたし易く、よく発症する。また、リポ蛋白の一種のカイロミクロンが著しく上昇するリポ蛋白リパーゼ(LPL)欠損症では、膵炎を来し易い。乳児で乳を呑んだあと腹痛を来すなどの場合、中鎖脂肪酸(MCT)を主体とした治療用ミルクを必要とする。妊娠中に発症した場合、血液浄化療法によるカイロミクロンの除去や中心静脈栄養による厳密な脂肪制限を必要とする場合もある。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
高脂血症(こうしけつしょう、HL:Hyperlipidemia)は、血液中に含まれる脂質(中性脂肪やコレステロールなど)が過剰な状態を指す。
診断基準による分類
高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセリド血症といった種類があり、WHOの基準に基づき日本動脈硬化学会が診断基準を定めている。
高コレステロール血症/hypercholesterolemia
血液中の総コレステロール値が高い(220mg/dL以上)タイプの高脂血症である。生活習慣による高脂血症の多くがこのタイプである。フラミンガムスタディにおいて使用されたためこの値と生活習慣病との関連が注目されたという意味で重要だが、最近ではLDLのほうがあきらかに心血管リスクとの相関度が高いのでこの値の重要度は廃れている。現在WHO、アメリカ、日本のガイドラインの中で、いまだに総コレステロール値を重視しているのは日本のガイドラインのみである。
高LDLコレステロール血症
コレステロールの担体である低比重リポ蛋白(LDL)が血液中に多く存在する(140mg/dL以上)タイプの高脂血症である。現在世界最新のガイドラインである米国ATP-IIIによれば、コレステロールの検査値の中では唯一心血管疾患の絶対的リスクファクターであり、他の検査値であるHDL、トリグリセリドと比較して明らかに重要度が高い。
低HDLコレステロール血症
血液中の、いわゆる「善玉コレステロール」が少ない(40mg/dL未満)タイプの高脂血症である。特に女性において、心血管疾患の重要なリスクファクターとなりうる。
◆リポ蛋白
高トリグリセリド血症 (高TG血症)
血液中にトリグリセリドが多く存在する(150mg/dL以上)タイプの高脂血症である。内臓脂肪型肥満の人に多い。一時期(米国ATP-IIのころ)、その心血管疾患との関連が疑問視されたが、現在ではやはり関連はあると考える人が多い。RLP-C(Remnant-like lipoprotein particles-cholesterol)が、高TG血症における動脈硬化発症への関与が示唆されている。
根本要因による分類
生活習慣に起因する高脂血症
喫煙や食生活の乱れなどにより、血液中のコレステロール値が上昇した状態。食生活の改善や運動の習慣化により改善されることが多い。
家族性高脂血症
LDLの代謝異常など先天的要因による高脂血症で、治療回復が困難である。
◆I型家族性高脂血症
末梢組織が血液中を循環するリポ蛋白から脂肪酸を受け取る際に使われるリポ蛋白リパーゼ、あるいはそれを活性化するアポ蛋白であるapo C-IIの機能不全により、血液中の脂肪が末梢に行き渡らず、血液中に増えるために起こる。血中カイロミクロン濃度の増加が見られる。
◆II型家族性高脂血症
LDLはLDL受容体を介して、末梢細胞に取り込まれるが、このLDL受容体を欠損あるいは障害を受けた場合に発症し、血中のLDLが増加するために発症する。
◆III型家族性高脂血症
末梢細胞によるリポ蛋白認識の際にマーカーとなるアポ蛋白 Eの3種の分子種(apo E2、E3およびE4)の内、正常型のE3に対して受容体への結合力の弱いE2を発現していると、カイロミクロンレムナントやIDLの血中からのクリアランスが低下してこれらが蓄積するために発症する。特徴的な症状には手掌線状黄色腫がある。
二次性高脂血症
日常臨床では、甲状腺機能低下症とネフローゼ症候群が挙げられる。閉経後や妊娠中も血清脂質が上昇する。
合併症
黄色腫(皮膚にできる黄色い腫瘤)
治療
体脂肪率の減少により大きく数値を低下させることが可能である。2-3kgの減量が大きな影響を与える。
食事療法
日常の生活強度に合った食事をする必要がある。目安は、
総エネルギー量(kcal)= 標準体重(kg) × 生活活動強度指数(kcal)
・生活活動強度指数
・軽労働(主婦・デスクワーク):25〜30 kcal
・中労働(製造・販売業・飲食店):30〜35 kcal
・重労働(建築業・農業・漁業):35〜40 kcal
で計算し、食事量を決める。エネルギー量の計算は、80kcalを1単位として計算する方法が簡単で、一般的である。例えば、デスクワークの多い成人男性では、1500kcal〜1600kcal(約20単位)ということになる。
その他、重要点として
・毎日、いろいろな食品をとり混ぜて、バランスよく摂取する。
・アルコール、甘いものは控えめにする。
・食物繊維をとる。
・1日3食きちんと食べる。
運動療法
医者と相談してメニューを決めて実行する。いきなり激しい運動は避けるべきである。(内部リンク:運動療法も参照のこと)
投薬による治療
スタチン系などの脂質降下薬(LLD : lipid lowering drug)である程度血中の中性脂肪やコレステロールを下げることができ、合併症の発症リスクが下がるとされる(→根拠に基づいた医療)。
ただし、薬剤治療は高脂血症の原因を解決するものではないので中止すればまた以前の値に戻ることが多く、そのことを指して「一生やめられない」と表現されることもある。これは、麻薬のように身体依存性があったり、ステロイド製剤のように急に中止できないという意味ではない。根本的なコントロールには生活改善が望まれるが、遺伝素因も大きいため必ずしも生活習慣だけで治療できるものではない。
透析による治療
LDLアフェレーシスといわれ、重度の家族性高脂血症を患う人などに行う治療法である。
患者の血液を取り出し、LDLなど不要なものをろ過して体内に戻す方法で、血液中のコレステロール量は急激に減少するがすぐに元に戻ってしまうため、2週間に1度は治療を行う必要がある。
しかし、これも根本的な解決には至らない。
高脂血症に由来する疾患
・動脈硬化症:自覚症状はない場合が多いが、血管壁に徐々にコレステロールが蓄積され動脈硬化症が進行することで血液の流れが悪くなる。特に頭蓋内の血管がつまり、脳の一部が死滅する脳梗塞や、心臓の冠動脈の血管が詰まる虚血性心疾患になりやすい。
高血圧、糖尿病、肥満とともに死の四重奏と俗称され、現在はメタボリック症候群といわれる。
・膵炎:膵臓の病気。大量飲酒者では高トリグリセリド血症をきたし易く、よく発症する。また、リポ蛋白の一種のカイロミクロンが著しく上昇するリポ蛋白リパーゼ(LPL)欠損症では、膵炎を来し易い。乳児で乳を呑んだあと腹痛を来すなどの場合、中鎖脂肪酸(MCT)を主体とした治療用ミルクを必要とする。妊娠中に発症した場合、血液浄化療法によるカイロミクロンの除去や中心静脈栄養による厳密な脂肪制限を必要とする場合もある。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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